ニュートンとアインシュタイン

ニュートンと言えば万有引力を発見した物理学者です。ニュートンが記述した万有引力は遠隔力、離れたもの同士に一瞬にして働く力でした。ある瞬間に突然物体が現れたとすると、その瞬間にその物質からの万有引力を受ける、そのような力です。これはニュートンが活躍した時代からするとかなり突飛な考え方でした。

 

物事はあるところから近くのものに影響が及んで、それがまた別の近くのものに影響を及ぼして、と少しずつ影響が広がっていくものだと考えられていました。結構自然ですよね。遠隔力は離れたところにいきなり影響を及ぼす魔術的な考え方でした。ニュートンは最後の錬金術師と呼ばれることもあり、魔術にも傾倒していました。それもあってか、遠隔力としての万有引力を思いつきました。

 

その後、万有引力に続き、電磁気力が定式化されました。電磁気力は電気的な力を及ぼす電場と磁気的な力を及ぼす磁場が空間を満たしていて力を与えるという記述をします。この電場と磁場の変化は光速で伝わっていきます。ある瞬間に突然電気を帯びた粒子が現れても、離れた別の電気を帯びた粒子が影響を受けるのは一瞬ではなく時間がかかります。つまり、万有引力とは違って順々に影響が広がっていく力なのです。

 

万有引力も電場や磁場のような無限でない速さで影響が広がっていくようなもので記述できないのだろうか。それを実現したのがアインシュタインです。アインシュタイン万有引力、つまり重力を及ぼす重力場を記述する方程式を発見しました(一般相対性理論です)。重力場は電場や磁場と同じく変化が光速で伝わっていきます(この変化が伝わっていく様子が重力波の伝播です)。これで重力も電磁気力も魔術的な一瞬で離れたところに作用する力ではなく、その影響が徐々に伝わっていくものとして記述されるようになりました。

 

一般相対性理論ニュートンの理論よりも高い精度で現実の世界の重力を記述します。ですので、重力は光速で変化が伝わっていくものだという見方はよりよいものだと言えると思います。現在、一般相対性理論量子論を融合した量子重力理論(ひも理論など)の構築に向けて研究が行われています。量子重力理論では重力は一瞬で伝わる力として記述されるのか、徐々に広がっていく力として記述されるのか、気になりますね。