しないではいられないことをし続けなさい

タイトルはマンガ家の水木しげるさんの言葉です。水木しげるさんは妖怪とマンガが好きでたまらなくて作品を執筆していたことが窺える言葉です。妖怪は子どもの頃に世話してくれていたのんのんばあという方にたくさん話を聞かせてもらって好きになったそうです。そして絵が描くのが好きで画家を目指していて、第二次世界大戦後にパプワニューギニアから日本に戻ってからマンガの執筆を始めました。妖怪も絵を描くことも、どちらも水木しげるさんが子どもの頃から好きなことでした。

 

手塚治虫はマンガを描くことはけしからんことだと思われていた戦時中、軍需工場で働いているときに教官の目を盗んでマンガを執筆していたそうです。生涯ずっとマンガを描いていて、病床でも描こうとしていたそうです。最期の言葉は「頼むから仕事をさせてくれ」というものだったと言われています。描いた原稿は約15万枚と推定されていて、1冊200ページで単行本にすると約750冊になります。膨大な数です。短い睡眠時間でマンガの執筆に取り組んでいました(アニメ制作もしていました)。

 

宮崎駿は絵コンテを切りつつ、すべての原画のチェックをしながら映画を作っていきます。普通、監督は原画のチェックはしないのですが、宮崎駿はアニメーターとしての腕がすごくて原画にも目を通しているそうです。しかもチェックだけでなくて自分で描き直す場合もあります。相当な仕事量のためナウシカを作った後に「もう映画は作らない。やめよう」と思ったとドキュメンタリーで語っていましたが、映画を作っていない時期が続くとまた作りたくなってきて制作に入るそうです。何度も引退宣言をして撤回していますが、「つらくてやめようと思う気持ちは本物だけど、また作りたくなってしまう」というのが本当のところだと思います。

 

スポーツの世界では練習に明け暮れる選手がいます。オフシーズンはシーズン中に溜まった疲労を癒す期間ですが、オフシーズンでも練習に専念したり国の代表として試合に出たりする選手がいます。シーズン中もチーム練習だけでなく個人練習に励む選手がいます。身体を動かすことの他に、映像を見て自分や対戦相手のプレイについて研究します。練習量が多すぎて身体に負担がかかると怪我の心配があるので、チームの方から練習をするなと止められる選手もときどきいます。

 

以上の人たちは、しないではいられないことをし続けている人たちだと思います。しないではいられないことを自分の仕事にして常に全力で取り組み続けている人たちです。手塚治虫の軍需工場のエピソードなんかは「やめろと言われてもやってしまう」というほどの情熱です。そのパワーで進み続けたからこそ、それぞれの分野でトップクラスの仕事をしたのだと思います。もちろん好きなことであっても仕事にするとつらいことが多々あります。自分の好きなようにはできない場面がたくさん出てきます。それでも、しないではいられないくらい熱中できることをずっと続けられることは幸せなことじゃないかなと思います。

 

今までに書いた人たちは、しないではいられないことを仕事にした人たちですが、仕事である必要はないと思います。趣味でも何か熱中できることがあることはとても幸せなことだと思います。何年もかけて何かを作ったり、世界のあちこちに旅行に行ったり、学問などを学んで研究したり、スポーツに打ち込んだり、ゲームをやり続けたり、本を読んだり、映画を見たり、音楽を聴いたり演奏したり、ライブやイベントに行ったり、コンカフェに通ったり、電車に乗ったり、世の中には様々な熱中できることがあります。好きなことに熱中するのはメンタルにも良いと思います。ストレス発散にもなりますし、考えなくてもいいことを考える時間が減ります。さらに「○○がしたい!」というパワーがわいてきます。その気持ちに従って趣味に打ち込むと満足感が得られます。しないではいられないくらいしたいことがあることは人生をとても充実したものにすると思います。

 

僕のしないではいられないことは、今までの経験から考えると物理かなと思います。高校、大学、大学院と物理を学び、研究して、最後の方の論文を書いていた時期くらいからは物理のことを考え出すとずっと考えていることがあります。大学院を出てからもそうです。物理のことを考えているときは、難しくて訳が分からないという気持ちになることもありますが、確かに幸せな気持ちになっていると思います。このブログを読んでくださっている方々も遠慮せず自分の好きなことに熱中してください。